第3章 心の風景
火影補佐である奈良シカマルが、アカデミーに砂隠れの里の忍を連れてきたのは、よく晴れた風の強い日だった。午前の公聴会を終えて、牡丹が教務室の扉を開くと、身の丈ほどある扇子が、椅子の傍に立て掛けられていた。驚いて立ち止まった牡丹の後ろから、早かったですねとイルカが顔を出す。
扇子の陰から姿を現した金髪の女性は、勝気な笑顔で答えた。
「アカデミーが教育課程を修正すると聞いてね。こちらも参考にさせて貰おうと大慌てで駆けつけた訳だ」
イルカに返事をしていたはずの彼女の目線は、途中から牡丹に向けられていた。シカマルが、彼女は砂隠れの里の忍で風影の姉であることを告げる。
「テマリだ。よろしく」
彼女は牡丹に手を差し出した。その手を握ると、彼女はまた勝気な笑顔を見せる。生気に溢れたその表情に引きずられるように、笑った。本当に気持ち良く笑う人だ。
よろしくお願いしますと答えてはみたが、違和感が残る。テマリは牡丹を知っているようだ。不思議に思って聞いてみると、彼女はやはり笑って答えをくれる。
「里中に轟いているよ、火影のお姫さま」