第3章 心の風景
視察員として牡丹をアカデミーに派遣してから、二週間余りが過ぎた。
忍術を除いて、彼女の見識はアカデミーの比ではない。教養や座学に係わる視察及び改善の報告を求めたところ、牡丹は滞りなくその任務を遂行した。
「正直、現場の方は戦々恐々としていますよ」
ナルトの座学に関する進捗報告に兼ねて、イルカは牡丹に纏わる子細を告げる。
「先週の報告書は、教壇に立つ者として、身につまされる内容でした。教育的歴史観の改善案などは多角的な見地で、批評も耳が痛い。牡丹さんが査察したカリキュラムは、順にテコ入れに入っていますよ」
そりゃもう随分と役立っているようで。
不意に芽を出した拗れている感情を、カカシは飲み込んだ。直視しなくない心の澱から顔を背けるように、話題を変える。
「術のほうは、どうです」
ついでにイルカから目を背けるように、山積みの報告書の一番上を手に取った。暗部が執行したAランク任務の報告及び報酬増額確認書。任務を完了した上で、追加報酬を得るほどの成果を挙げてきたようだ。
「まあまあ、普通の成績といったところですね。時間はかかっても、アカデミー卒業程度には習得できますよ」
ご安心くださいと、柔かに答えるイルカの笑顔が、何故だかとても眩しかった。