第2章 ぬくもりの分け方
「首尾はどうだった」
ひとり露天風呂の打たせ湯に当たりながら呟いたカカシの独り言には、当たり前のようにどこからか返事が湧いて聞こえた。
「里の結界にも異常はありませんし、哨戒の連中からも目立った連絡はないですね」
木ノ葉の勢力を削ぐために、大名との繋がりを象徴する牡丹が狙われるかと睨んでいたが、事件が無いのならばそれに越した事はない。
「木ノ葉の忍に成りすまして彼女を襲撃することで、大名派と過激派の内戦を誘発させる。俺ならそうするね」
「正直なところそういった大々的なテロより、先輩の周りの個人的な鬱憤の方が心配ですね」
俺ってそんなに恨みかってたかね、と頭を掻いた。里外ならまだしも私怨と言われれば、普段の行いを省みるしかない。しかも、本当に自覚はないのかと駄目押しの確認がテンゾウから入るともなれば、佗しい。
「ストーカーですよ、ストーカー。先輩が尾行を撒けないような失態はないと思いますが、最近は、目が合ったから付き合ってるとか、同じ店に入ったから愛されてるとか、ちょっと勘違いでは片付けられない報告が増えてます」
全ての尾行は無意識に撒いていたから、ストーカーの発想はなかった。そもそも、目が合ったから好意があるというのなら、今まで会話した殆どの人間に好意を持っていることになってしまう。
面倒だなとため息を吐く反面、惚れた腫れたという話に注力していられるのは平和な証拠かという感想を抱く。それとも、生命の危機を感じて、本能が子孫を残そうと目論んでいるのか。
カカシが話を畳もうと口を開きかけた時、結界が破れる感覚に、全身が泡立った。