第7章 アルバイト
私と変わって控え室に入った黒尾さんの着替えは思ったより早く終わった。
きとりちゃんは、これから送別会があるそうで、先に帰る事にする。
会場から出て、駅までへの道の途中で黒尾さんが止まった。
視線の先にはホテル。
何を考えてるんだ、この人。
「入りませんよ。」
「いや、二人してこんな頭と顔で帰ったら何言われるか分かんねぇだろ。」
「…あ。」
確かに私達の髪はセットされたままだしメイクは落とされていない。
こんな状態で一緒に帰ったら、駅で偶々会ったなんて嘘は通用しない。
「別に変な事しねぇから。」
「したら軽蔑しますよ。」
溜め息を吐いてその場所に足を踏み入れた。
手慣れた様子で部屋を選び、鍵を受け取っている光景を眺める。
こういう場所、よく来るんだろうか。
まぁ、モテるみたいだしね。
意識しないようにぼーっとしながら部屋に入る。
先に使っていいと言われたので、シャワーを浴びに行った。
メイク落としも置いてあって有り難い。
化粧を落として髪を洗い、すぐにシャワールームから出た。
「次、どうぞ。」
タオルを頭に掛けて拭きながら声を掛ける。
黒尾さんはこっちを見て固まった。
「…お前、刺激的過ぎるだろ。」
体を指差されて見下ろす。
髪を乾かしてから服を着たかったから、今の私が身に付けているのはバスローブだった。