第7章 アルバイト
中にいたのはきとりちゃんと、もう一人。
勿論、黒尾さんである事は分かる。
ただ、髪はオールバックになっているし、服装がダークグレーのタキシードに変わっていた。
化粧も少しされているようで、顔立ちも違うように見えてしまう。
「はい、並んで。りら、さっきみたいに腕に手を添えて。」
二人並ばされて、何枚もデジカメで写真を撮られた。
「なんで、こんな事になっているんでしょうか。」
「知らね。センパイがやりたいだけだろ。」
「私もそんな気がします。」
撮影中に小声で会話をしてもきとりちゃんは気付いていない。
背景は控え室で、本物の新郎新婦ではない私達を撮って何が楽しいんだろうか。
理解不能ではあるけど、どうせ言っても止めないから黙って撮らせておいた。
きとりちゃんの個人的な撮影会が終わると、黒尾さんが外に出る。
私が着替えなきゃならないからだ。
「ドレス、重かったでしょ?」
「まぁ、ね。ついでにヒールが高くて足が痛かった。」
「灰羽に合わせる為にはあれくらいの高さにしないとダメだからね。ごめん、無理言って。」
「終わったし、別に良いよ。」
本日の愚痴などを吐きながら着替えを終わらせた。
重たい布の塊が離れてほっとする。
次は黒尾さんが着替えるのだろうと、自分の靴を履いて外に出た。