第7章 アルバイト
右に立つリエーフさんの腕に右手を軽く添えて、開かれた扉から入場する。
今更だけど緊張してきた。
それでも式は進んで、誓いの言葉も指輪交換も署名も、記憶がほぼないまま終わっていた。
拍手の中、退場まで終えると疲れがどっと溢れてくる。
ドレス重い、足が痛い、脱ぎたい。
早く…帰りたい。
「見学の方が出てくる前に移動して下さーい。」
スタッフに言われても、疲れと重みで動けない。
途端に視界が大きく変わった。
天井が見えている。
倒れたのかと思ったけど、体に感じる浮遊感と温もりで違うと分かった。
「お疲れっス。キツいみたいなんで運びますよ。」
声の主はリエーフさんで、私はどうやらお姫様抱っこをされているようだ。
疲れて反抗する気力は起きず、落ちないように服を掴んでそのまま運ばれた。
大した会話もなく移動して控え室の前で下ろされる。
「有難うございました。」
恥ずかしい思いはしたけど、運んでくれたのは事実で、お礼を言って頭を下げた。
「いいっスよ、礼なんて。それより今度、飯でも…。」
「あ、りら戻った?」
リエーフさんが話し始めたのを遮ったのは、控え室を開けたきとりちゃんで私を手招きして呼んでいる。
「用事あったら連絡下さい。失礼します。」
手で電話を示す形を作って耳の横で軽く振り、小さく会釈してから控え室に入った。