第7章 アルバイト
黒尾さんと喋り終わると、私の方を向いたきとりちゃんに紙の束を渡される。
「コレ、進行表ね。人前式だからキスはないし、安心して。」
中身をパラパラと捲って確認する。
誓いの言葉とか読むのか…。
凄く嫌なんだけど、諦めるしかないか。
紙に目を通してしまうと、きとりちゃんに手を引かれた。
「もう時間ないし、来て。リハーサルは一回だけだよ。」
歩かされた先、足元には何センチあるんだよ、みたいな高いヒールの靴。
これを履いたら身長が180越えてしまう。
相手役の人は大丈夫なんだろうか、と思ってしまった。
靴を履いて、さっきにも増して動き辛い。
支えが欲しくて壁に手を付きながら歩いていると黒尾さんに手を取られた。
「壁よりこっちのが自然だろ?」
そのまま、私に歩調を合わせて歩いてくれる。
普段より近い目線が、少しだけ気恥ずかしくなって俯いた。
多分、足元を気にしているようにしか見えないだろう。
そうやってゆっくりと、確実に模擬挙式をする聖堂に近付いていった。