第7章 アルバイト
早足で、私達の元に来たきとりちゃん。
同僚だろうプランナーさんは驚いていた。
そんなものは気にせず、私の姿を頭から足の先まで観察している。
「りら、アンタ身長は?」
「…170、くらいだけど。」
「よし!いける!」
焦った声と顔に押されて質問にだけ答えると、私の腕を掴んで立たされた。
「クロは…どうする?打ち合わせ続ける?」
「…婿だけでする打ち合わせとかねぇだろ。」
黒尾さんは溜め息を吐いて立ち上がった。
「ごめん、トラブル発生。友人だからちょい連れてくわ。」
プランナーさんに謝って、きとりちゃんは私を引っ張っていく。
「失礼しました。」
出ていく間際に室内に頭を下げて、それからは私を引っ張りながら早足で歩いていった。
意味が分からず止めたいけど、言って聞く状態じゃないのは分かっている。
連れていかれた先は控え室のような場所。
端には幾つもの白いドレスが並んでいる。
「花嫁役に逃げられたの。彼氏に怒られた、とかで。」
きとりちゃんはドレスを物色しながら話を始めた。
嫌な予感しかしない。
「代役捜すっても、時間もないし。りらなら背も高いし、見た目は綺麗めだからいけるかなーと。表情に気付く程、近くで見る人はいないし。」
「嫌。」
「アルバイト、だよ。ちゃんと給料出すから。」
嫌な予感程、当たってしまうものなのだと知った。