第1章 始まり
きとりちゃんの顔色を横目で見ながら一本目の缶を一気に飲んで空にしてみせる。
「きとりちゃん、まだ9時前だしスーパー開いてるよね?…焼酎。」
二本目の缶を取りながら年長者に向かって命令した。
向こうは私の酒の強さを知っている親戚で、今回の賭けの内容を考えると断らないのを分かっている。
思った通り、きとりちゃんは立ち上がってリビングを出ていった。
「赤葦、クロ、あんま飲まないでりらに飲ませて。じゃなきゃ、アンタ等が潰されるよ。…その子、ザル通り越してワクしかないから。」
余計な一言を残して。
「…ワクっスか。」
意味が分からないと言うような顔をして赤葦さんが私を見た。
「枠、です。ザルの縁取り部分しかなくてアルコールの許容量が底無し、と言いたいのかと。」
二本目も簡単に空けて缶を床に置いた。
「一応、言いますけど全く飲まずに起きているだけでは駄目ですよ。」
私のペースの早さに呆れているのか、二人はまだ一口も飲んでいない。
指摘するように視線で缶を示した。
「その条件だけどな…。」
気まずそうな顔をして、ツッキーさんを見るトサカ頭。
「ツッキーは除外、な?アイツ、未成年。今年、二十歳になる筈だが、一応止めとけ。」
それには納得したけど、すでに酔っ払った木兎さんに絡まれ、飲まされているのが見えた。