第6章 伝える
私が来なきゃ出ていかずに済んだ、って言っているように聞こえる。
一緒に暮らして平気か、と聞いてすらくれないのは私の意見なんか関係ないからだ。
「別に私は平気だけど。」
昨日までの私なら、ここは引いて‘私が出ていく’と言う場面だ。
私一人いないだけで、面倒事もなく纏まる話なんだから。
だけど、思い通りにはさせたくなかった。
「…りらが大丈夫って言うなら別に追い出す理由はなくなるけど。また、我慢してない?
本当は男ばかりの家は嫌なのに、自分が耐えれば皆が面倒な事しなくて済む、とか思ってない?」
きとりちゃんに肩を掴まれて真剣な顔で聞かれた。
「一緒に住むのが嫌とは思ってないけど。」
「…けど?」
「…月島さん、一回くらい叩いて良いかな。」
別にキスされた事を気にしている訳じゃない。
それが変わろうと思えたきっかけになったのも間違いない。
だけど、こっちはその為に普通ではない考え方を暴露する羽目にもなったし、何のペナルティもなく飄々と過ごされるのは腹が立つ。
「それは許す。」
「一回じゃなくて何回か叩いておいた方が良いよ。」
「必要なら押さえておいてやろうか?」
三人の許可が簡単におりた。
何故、私がそうしたいのかは見透かされているようだった。