第6章 伝える
嫌だ、と言った方が良かったんだろうか。
別に今のは大して痛くなかったし、悪意のある攻撃じゃないから気にしていなかったのに。
「そういえば、良いんですか?」
少しだけ熱を持った頬を擦っていると、赤葦さんが気付いたように声を出した。
内容が掴めなくて首を傾ける。
「え?何が?」
きとりちゃんが、疑問をそのまま口にして答えを待つように赤葦さんを見ている。
「きとりさんが転勤したら、また男所帯に女一人になりますけど。」
「…あー…。確かに。」
「アンタ等に出てって貰うに決まってるじゃない。」
「センパイ、話が違うだろ。」
「いきなり出てけなんて言わないけど、引っ越し先は早めに見つけてね。」
「一人暮らし出来る程、バイト詰め込んでないんスけど。…まぁ、最悪実家に帰ります。」
「俺もそうするわ。」
三人で話を始めてしまったのを眺めていたけど、その内容はあまり気分の良いものじゃなかった。