第6章 伝える
黒尾さんの様子からすると、全て聞かれていると思う。
私は何かを試されいた。
きとりちゃんも私に近寄って、視線を合わせるように目の前にしゃがむ。
「ごめんね。クロから話聞いた。…私、さ。甘く見てたよ。男が多い場所に居たって、そんな犯罪紛いの事までされてたとは思わなかった。
私には嫌な事、嫌って言うし大丈夫だろうって勝手に安心してた。よく考えたら、アンタがそうやって拒否する相手って私くらいのもので、他の人に対しては我慢する性質だったなって。
あんな風に考えなきゃならないくらい追い詰められてきたんだよね。」
「いや、犯罪紛いじゃなくて犯罪だろ。無理矢理なんだから。」
「黒尾さん、今の話は止めちゃいけないやつです。」
黒尾さんがいい話になろうとしているのに口を挟んで、それを赤葦さんが突っ込んで止めていた。
「これで感動して女二人に泣かれたら俺達が悪者みたいになるだろ。」
「何言ってんの。元々、悪人面でしょ。」
「センパイ、ボクが泣いちゃいマスヨ。」
今までの空気は一掃されて目の前でふざけた会話が始まる。
そのままわいわいやっていたけど、気を取り直したかのようにきとりちゃんが私を見た。
「とにかく、そういう事でアンタに謝ろうと思ったら部屋で木兎が寝てた。
昨日の話もあったから、まぁ…悪いけど疑った。で、クロにカマ掛けて貰ったの。」
何を試されたのか、やっと分かった。
本当に軽い女か見極めようとしたんだ。