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第6章 伝える


私の機嫌が悪い時は作り笑顔なのだ、ときとりちゃんが話していたから、怒っていると分かるように。

「お前、なんで木兎の為に怒ってんの?」
「…昨日、あんな話になって皆さんに嫌われた、軽蔑された、と思いました。折角、居場所をくれたのに居られなくなるな、と。
そう思ったら怖くて、淋しくなりました。…木兎さんは、手を差し伸べてくれたから。言いたいこと言って、喧嘩になったら止めてやるって。だから…。」

私が変わる為には、思った事を口に出して話す事が第一歩だ。
分かってる。
さっきだって、素直にお礼を言えた。
だから、大丈夫だ。
そう考えていても不馴れな事をするのにはやっぱり勇気がいるもので、体が震えて声は出なくなった。

続きを待っているのか、黒尾さんは私を見ている。

「…大丈夫。今は木兎さん、いないけど俺がいるよ。喧嘩になったら止めるから、言いたい事を言っていい。」

近くで聞こえた優しい声。
赤葦さんに震えていた手を握られて、落ち着きを取り戻した。

「…甘えたんです。淋しいから一緒に寝て下さいって。
木兎さんとは本当に何もないので、あの人を悪く言わないで下さい。」

最後まで言えた。
その途端に気が抜けて体が崩れ落ちる。

黒尾さんが近寄ってきて、頭を撫でられた。

「良く出来ました。…センパイ、もういいだろ?」

撫でる手が離れて、黒尾さんが振り返った先を見ると出入り口にきとりちゃんが立っている。

朝には弱い筈なのに、なんで今日に限って起きてるんだ。
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