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第6章 伝える


リビングのソファーに腰を下ろしてテレビを着ける。
早朝にやっている番組なんてニュースばかりで、大した興味もなく時間潰しにただ眺めていた。

暫くそうしていると、扉の開く音が聞こえる。
振り返って見ると赤葦さんが立っていた。

「…おはよう。」
「…お早う御座います。」

朝の挨拶だけで会話は一切ない。
昨日の事もあって、私からは喋りたくもなかった。

黙って、一人でいた時と同じようにテレビの画面を見ているとコーヒーの匂いがしてくる。

「…飲む?」
「苦手なので結構です。」
「そう。」

キッチンの方から聞こえてきた言葉に振り向きもせずに声だけ返した。
向こうだって、本当は私と会話したい訳じゃないと思う。
それなのに、何故か私の隣に座ってきた。

隣からはコーヒーを啜る音だけが聞こえて、気まずくなって立ち上がる。

「…ごめんね。」

ただ一言。
少し後ろから聞こえた謝罪は、何に対してなのかも分からない。

「俺達は何も知らなかったから。そういう考え方になってしまった理由も、何があったのかも。
言葉に引っ掛かりはあったから、何か隠してるのかな、とは思ってたけど。」

じゃあ、今は知ってる、という事か。
黒尾さんが喋ったんだろうな。
後は昔からの私の性格を知ってるきとりちゃんか。

勝手に自分の柔な部分を暴露された事に嫌な気持ちはなかった。
わざと気になるような言葉を残して、気付いて、助けて、と心でずっと叫んでた。

気付いて知った後に助けてくれるかは別問題だけど、とにかく気に掛けてくれた事が嬉しかった。
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