第5章 添い寝
真剣に私を見て話を聞いてくれている。
口を挟むのはきっと木兎さんの癖だ。
気にせず続きを話すことにした。
「ゴールデンウィークが終わった辺り、ですかね。隣空いてるかって声を掛けてきたのが木葉さんでした。
隣でご飯を食べてても私が喋らないからずっと無言で、それでも何故か毎日のように非常階段に木葉さんは来たんです。
その内、座ってる位置がどんどん近くなって、私が喋らない分、独り言みたいにずっと話すようになりました。
面白い先生の話、進路の話…バレー部の話。貴方の事も木葉さんに聞いて知りました。
その内に、私のお弁当に手を出してきたり、廊下であっただけでも話し掛けてきたり、少しずつ色んな距離が近くなっていった。」
話していく内に苦しくなった。
私が、終わらせてしまった恋だったから。
言葉が出なくなって、口をきつく閉じた。
「…木葉な、言ってたぞ。独りで階段で飯食ってる女の子がいる、って。淋しいだろうから話し掛けて、顔見たら超可愛かったって。
俺にも会わせろって言ったけど、俺だけのものだから、とか言ってたから、てっきり彼女かと…。」
これ以上話せない、と思ったのに一つの言葉で苦しさが消える。
人に俺だけのものって言う程、私を思ってくれていた。
話さなきゃ、ならない。
この人に言ったって、あの時には戻れないし言葉は取り消せない。
本人に言葉の真意が伝わる訳じゃないけど、誰かに気持ちを伝えたかった。