第5章 添い寝
木兎さんには話しても良いか。
寝たら忘れそうだし、あの人の知り合いだ。
そして、皆が知ってるあの人を悪く言わなかった唯一の人。
甘えて、昔を懐かしんで思い出を語るなんて、きとりちゃんに知られたら笑われるかな。
それでも、話をしたかった。
「…昔話をしていいですか?」
「桃太郎とかか?」
出端を挫かれるのは予想の範囲内だ。
首を振って否定し、気を取り直した。
「私の初恋の話です。」
「そんな昔じゃねぇだろ?」
「5年近く前ですよ。」
「…木葉、だろ?」
完全に話が脱線する気配がする。
そう思ったのに、簡単に本題に戻された気がした。
「話せよ。りらちゃんが話したいなら全部聞くからな。」
「…有難うございます。」
小さくお礼を言って、思い出に浸るように目を閉じる。
「私は、小中学校の頃から無愛想で友達がいなかったんです。寧ろいじめられる対象になってたくらいで。だから、梟谷を受けました。その頃の人達と同じ学校になりたくなくて。
でも、元からの性格は治らなくて高校でも早々に孤立しました。お昼も同級生を避ける為に一人で非常階段で食べてました。」
「そりゃ淋しいな。飯は皆で食った方が楽しいし美味いに決まってる。」
「そうですね。今は、そう思います。」
「…続きは?」
自分で話を止めた癖に先を要求する声に、つい目が開いた。