第5章 添い寝
「俺が遊んでるから、当然そういう女の子が寄って来てた訳だ。でも、俺と寝たら自慢出来るじゃん、とか言われた時は腹が立った。
俺、この子に想われて無かった、って知ったら正直落ち込んだ。そういう時、俺には赤葦とか、たまたま進学した先が一緒だった黒尾とかいた。
アイツ等と馬鹿みてぇに飲んで、騒いで、そうやってる時のが女の子といるより楽しいって分かった。だから止めた。
もう、ちゃんと好きになった子以外とはしねぇって決めた。俺にはアイツ等って救いがあった。」
また頭を撫でられた。
今度は布団越しじゃなく、直接。
「なぁ、俺等は出会って数日だけど、これから一緒に暮らす仲間だ。りらちゃんに今まで何があったかなんて知らねぇけど、少なくとも俺は、アイツ等が俺にとって救いだったみてぇに力になりてぇって思ってる。だから…。」
「木兎さん、それは独り言じゃないです。私に話し掛けてますよね。」
話してくれた言葉が嬉しすぎて涙が出そうになったから、口を挟んで止めた。
「有難うございます。」
心からのお礼。
涙を耐えるのに精一杯で笑顔なんか作れない。
でも、気持ちは伝わったみたいで頭をさっきより強くガシガシと撫でられた。
落ち込んでいたからだろうか。
つい、半日程前までは苦手だった騒がしさが何故か心地好い。
素直に昔の、嫌な思い出を話したこの人が羨ましかった。
こういう所は見習いたい。
「私は…トラブル回避出来るなら嫌でも黙ってやり過ごすと決めてました。だから、自分から話す事に慣れてません。」
「良いんだよ。無理にまとめなくて。言いたいこと言って、喧嘩になったらそん時は俺が止める!任せとけ!」
「…頼もしいですね。」
少し会話をして、明日でもきとりちゃんと話をしようと決めた。
木兎さんは話してる間もずっと私を撫でてて、少しずつ眠気が襲ってくる。
眠気を押さえようと撫でる手を掴んで止めた。
「どうしたー?」
寝かし付けるつもりだったのか優しくて、この人にしては小さな声。
なんだか甘えたくなってしまった。