第5章 添い寝
扉を叩く音が耳に入る。
少し荒っぽく、強めのノックだ。
逃げた事を怒られるのか、と無視をしてベッドに入った。
聞こえないように布団を頭から被っていると、扉が開く音がする。
中に入ってきた足音が近付いてきて、ベッドが軽く沈んだ。
横に誰かが座っているのは分かるけど、寝たフリをしてやりすごそうと目を強く閉じる。
少し黙っていると、頭の部分を荒く撫でられた。
「寝てんのかー?」
聞こえた声は木兎さんだ。
きとりちゃんでなくて少しだけ安心した。
相手が分かっても顔を出すのは嫌で寝たフリを続ける。
「…俺、高校時代は全国で五指にも入るエースで、大学行っても部活やればナリに有名で、結構女の子と遊んでた。」
突然の昔話が始まった。
私はそのまま黙って聞いている。
少し、興味があった。
遊んでる人の心の内を聞いてみたいと思った。
木兎さんが、布団を捲る。
いきなりの事で驚いて目を開いてしまった。
してやったり顔の目と目が合う。
「起きてたな?」
何も言わず、顔をただ見ていると木兎さんはすぐに視線を私から外した。
「あー…。俺の独り言だ!独り言だけど、ココで話す!」
私が喋りたくないのを察したのか、宣言をしてまた話を始めた。