第5章 添い寝
私が間違ってる。
そんなのは分かっている。
一般的に、貞操観念を捨ててるような女は遊び相手にしかならないし、それを口に出して言うような女は論外だ。
私は誰とでも寝ますよ、と公言する人間が男女問わず好かれる訳なんかない。
「…仕方がないじゃない。男社会に親とか家とか全て無くして体一つで飛び込むには、それだけの覚悟が必要だったんだ。」
聞こえるかも分からない程に小さく、呟く程度の返答をして出ていった。
男社会に入ろうが、どんな生活をしてようが、身も心も綺麗なまま生きられる人だって勿論いる。
だから、言葉に出したそれはただの言い訳だ。
これは、育ちが違うんだから考え方も違う、なんて次元の問題じゃない。
私自身が、拒む事も抗う事も、諦め続けた結果だ。
部屋に入ると、床にはきとりちゃんが買ってきた洋服が散らばっている。
一つ一つを拾って綺麗に畳み始めた。
きとりちゃんは、私を大切にしようとしてくれていた。
それを最低な形で裏切った。
私が自分自身を大切に扱っていない、と言葉として出してしまった。
後悔しても時間が戻る訳なんてない。
このまま通すとしても、この家に居づらくなるだけだ。
かと言って謝るにしても私の根本的な考えが普通ではない訳で、それに気付いていても簡単には正せるものでもない。
悩むくらいなら、明日は早い内に起きて、皆に気付かれないように出ていこう。
洋服を畳み終えてショップの袋に入れると、纏めて壁際に置いた。