第5章 添い寝
怒られるかと思っていたのに、それからは何も言わずに立ち上がり私から目を背ける。
「…さて、なんかシラケちゃったし、飲み直す?もう寝る?」
他の面々の顔を見回し、倒れた椅子を直しにいった。
どちらにせよ、一旦は散らかした空き缶やらを片付けるようで、皆に指示する声が聞こえる。
「木兎、ゴミ纏めるから袋取ってきて。」
「クロ、空いたお皿重ねて貰える?」
「赤葦、クロが纏めたのキッチンで洗っておいて。」
「ツッキー、料理小さい皿に移すから菜箸持ってきて。」
わざとらしく、私の名前は呼ばない。
片付けだって皿洗いだって料理纏めたりするのだって、私がやれば早いの分かっている筈だ。
その違和感のある言動に気付いた人達は私を一瞥してから、言われた事をやり始めた。
いないものとして扱われるなら、いる意味がない。
リビングから出ようと立ち上がり、静かに出入り口に向かった。
「…逃げるな。これが、皆のアンタへの評価だ。」
扉へ手を伸ばしかけた時、後ろから強く、冷たい声が聞こえる。
「私が、わざとアンタを呼ばない、と気付いても誰もアンタを庇わない。それはアンタが間違ってるって皆分かってるから。」
続いた言葉に、その場で皆に背を向けたまま固まってしまった。