第4章 告白ごっこ
唇を何かで塞がれている。
柔らかい少し湿った感触。
これは、キスされてる。
キスくらいならいい、ファーストキスでもない、それは本心で。
慌てたりとかする、可愛らしい反応をして、笑われたり、からかわれるのも面倒だ。
黙ってそれを受け入れていると、勢い良く月島さんが離れた。
目隠しの手が外れて、目の前を見ると黒尾さんが月島さんの襟を掴んでいる。
何時の間にか、他の三人もソファーの周りに揃っていた。
皆の顔を見るように視線を動かすと、後ろの方で倒れている椅子が映る。
椅子が倒れる音やこちらに来る足音を聞き逃したのは、少なからず私も動揺したようだ。
「月島、やりすぎだよ。…大丈夫?」
赤葦さんが、私の口元をハンカチで拭ってくれた。
「手を繋ぐのと変わりません。肌と肌の接触なら皆さん、されましたよね。
口は粘膜だから厳密には違うかも知れませんが、私はそう思っているから平気です。」
隣が騒がしくなってきたので、赤葦さんの手を掴んで止め、月島さんの方を見る。
「殴るのは止めておけって!きとりちゃん、女なんだから!」
きとりちゃんが月島さんに向かって拳を振り上げていて、それを木兎さんが止めていた。
「私が気にしていないのに、そこまで怒る必要はないよ。」
私も、止めようとして言葉を放つ。
木兎さんを振り払って私を向いた彼女と目が合った。
すぐ後に、パンっと乾いた音が響く。
何が起こったか理解出来ない。
分かっているのは、頬と口内が痛い事だけ。
「ちょ!センパイ!」
月島さんを離した黒尾さんが、私ときとりちゃんの間に腕を伸ばす。
赤葦さんも、私を後退させるように手を引いてきた。
木兎さんがまたきとりちゃんを止めるように肩を押さえてる。
「うわ…痛そ。」
私を見ながら、この騒ぎの発端が呟いた言葉でやっと事態が飲み込めた。
私、叩かれたんだ。