第1章 始まり
今、買いに行ってきたんだろうか。
袋には近くのコンビニのロゴが入っている。
「なぁなぁ、お前は何飲むー?やっぱ女の子だから甘いのがいいかー?」
漁り出された甘いカクテルの缶を強引に手に握らされた。
突然の出来事に咄嗟に返す事も出来ずに呆然としてしまう。
「木兎ナイス!りらがあんな顔してるの初めて見た。なんていうの?鳩が豆食ってる顔?」
「「それを言うなら鳩が豆鉄砲食らったような。」ですよ。」
馬鹿丸出しのきとりちゃんに突っ込むように返す声が重なる。
その方向に顔を向けるとまた見知った顔。
天然なのか、緩くウェーブが掛かった黒髪。
整っている顔に少し眠そうな瞳。
「…赤葦さん。」
その人を指差して名前を呼んだ。
「何だよ、赤葦の知り合いか?」
さっきまでやり取りを寧ろ楽しそうに黙って見ていたトサカ頭の人が首を傾けて私を観察するように見ている。
「いえ、別に。」
正確に言うなら、私が一方的に知っているだけで‘知り合い’の表現は違うと思った。