第4章 告白ごっこ
次は誰だ、と席の方に顔を向けた。
「お次は黒尾ー!」
さっきと同じくきとりちゃんが楽しそうに言うと黒尾さんが立ち上がる。
木兎さんのようにハイタッチはしなかったけど、親指をぐっと立てて、いってくるわ、と言っていた。
私の目の前に立つと顔に向かって手を伸ばし、頬から髪へと滑るように撫でる。
「お前ってホント綺麗だよな。人形みてぇ。」
普段通り否定しようと思ったけど、またカットになるかと思って黙って聞いていた。
「褒めてんだから笑ってくれりゃ良いのに。…その無表情の中にどんな感情が渦巻いてんのか知りたくなる。」
頭を撫でていた手が止まり、後ろ頭を押さえて引き寄せられる。
力に従って胸元に額を当てた。
「りらをもっと知りたい。…お前が好きだ。俺だけのものになってくれ。」
緩く抱き締めるように両方の腕が背中に回る。
抜け出そうと思えば抜け出せるくらいの弱い力で、私を腕の中に留めている。
「…添い寝、嫌だったら俺選んどけ。分かってるから、何もしねぇよ。」
私にだけ聞こえる小さな声。
色々と話してしまったから、気を遣わせているのだと感じて申し訳なくなった。
「カット!クロ、なんか…らしくない。もうちょい、聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフ期待してたのにー。」
「本気で惚れた女に冗談みてぇな事言えるかよ。そういうの、卒業したんですぅー。」
皆がいる席の方に、ふざけた言葉を送りながら、私を腕から解放して頭をポンポンと撫でられる。
「ま、センパイと寝るのが一番無難だろうな。選べって言われた時、迷うなら俺にしろよ。俺は床で寝てもいいし。」
また私にだけ聞こえるように小さく言葉にして席に戻っていった。
黒尾さんはお調子者だけど世話焼きで、ここぞと言う時に頼りになるタイプかな。
勝負の主旨からは外れるけど、景品にされた添い寝が嫌だったら本当に甘えさせて貰おうか。
気を遣ってくれたお礼すら言えず、椅子に座り直した黒尾さんを眺めていた。