第4章 告白ごっこ
椅子を横に並べて審査員のように皆座っている。
相手役をやる私は一人で絨毯の上に立っているだけの状態で、何をすれば良いか分からない。
「はーい!じゃあ始めは木兎ー!」
きとりちゃんが司会を始めた。
「ヘイヘイヘーイ!」
名前を呼ばれた木兎さんが立ち上がり、ハイタッチを求めて両手を挙げながら席を回る。
「ウェーイ!」
応じたのは黒尾さんだけだったけど、他の人も手を掴んで無理やりタッチしてから私の元に来た。
私の肩に腕を回して引き寄せる。
力が強くて簡単に胸辺りに収まった。
「なぁ。俺、明日休みなんだけど、どっか行かね?」
「皆さんオフと聞いてますし、二人だけで出掛けるのはどうかと。」
「カーット!りら、そこは合わせて!やり直し。」
素で返したら怒られた。
単純な人相手にノって本気にされたらどうするんだ。
思っても口に出したら、この勝負自体成り立たない、か…。
諦めの息を吐くと木兎さんの顔を見上げる。
「公園でもお散歩に行きますか?お弁当作りますよ。」
無難そうな返答をし直した。
「マジで!?りらちゃんの手料理好き!」
デートに応じた事より、反応したのはそっちですか。
色気より食い気か。
呆れていると不意に木兎さんの腕が緩んで、抱き上げられる。
膝の裏側と背中を支えて抱いたこの格好はお姫様抱っこだ。
落ちないように慌てて首元に腕を回した。
「俺、料理も好きだけど、りらの方が大好きだから先にお前を食っちゃおうかな。」
抱き上げられている事で、さっき見上げていた時よりも近い顔が照れたように笑っていた。
「カットォー!木兎、いいじゃん。アンタがこんな口説き方するとは思ってなかったわ。もっと、ただ単純に好き好き言うだけのイメージだった。」
ストップの声が聞こえて、急速に冷静に戻る。
「なんだよ、それー。」
木兎さんは批評に言い返しながら私を降ろしてくれた。
いきなり抱き上げられたドキドキ、吊り橋効果か。
普段は見れない、照れた顔のギャップもある。
本人は意識してないだろうからタチが悪い。
一応の評価をしながら席の方に戻る木兎さんを見送った。