第39章 HAPPY WEDDING
‐赤葦side‐
狂っている自覚はある。
でも、それは、俺だけじゃないんだろう。
だから、きとりさんも、簡単に俺の誘いにノって、一緒に酒の席から抜けてきた。
明日にはりらと永遠の愛を誓い合う男の元恋人で、りらの親戚。
未練があるのに強がって、2人を応援してきた辛さも、その中で歪んでいく気持ちも、よく理解出来る。
十数年もの間、自分の中心だったりらでないのならば、誰が相手であろうが同じで。
それなら、利害の一致するこの人で良い。
否、この人が、良い。
「俺と、朝まで過ごしましょうか。」
下手な駆け引きはいらない。
きとりさんは、鈍感ではないから、分かってて着いてきた筈だ。
一言も発する事は無く、頷くだけの返事だったけど、それでいい。
そこからは無言で、あの家に2人で戻った。
愛情なんか勿論無い。
ただの傷の舐め合いのような行為。
それは、思っていたよりもあっさりと終わって。
「…ね、赤葦。付き合ってた事にしちゃわない?アンタと一晩の仲になっちゃったとか、下手したら皆に軽蔑されちゃうし。」
バレなきゃいい、なんて感覚は無かったらしいきとりさんからの提案がある。
「構いませんよ。ただ…」
それはそれは、俺にとって、なんとも都合の良いもので。
「結婚を前提になら、ですけど。」
条件を付け足した。
これで、俺は彼女の親戚という立場を手に入れる事が出来る。
了解の返事のつもりなのか、顔が近付いて。
契約の証という名の、口付けを交わした。