第39章 HAPPY WEDDING
鉄朗さんが、帰ってきた。
玄関が開く音に反応して、出迎えに行く。
「ただいま。俺の可愛い奥様。」
「おかえりなさい。まだ籍が入ってないので、妻ではありませんが。」
「もうすぐ、そうなんだろ?」
「…はい、まぁ、そうですね。」
玄関先での会話は、通常運転な気がしたけど。
鉄朗さんの視線が、不自然に下を見ている。
私の手の中にある紙を見ている。
「…見たか?」
「見ました。」
「来て欲しかった?」
「普通、あんな離れ方した女の結婚祝わないでしょう。」
「あっちの気持ちじゃねぇよ。お前の気持ち。」
その場で始まる会話。
そこで、分かった。
これを、わざと私に見付けさせた意味。
私の気持ちの、最終確認だ。
正直に言えば、来て欲しかった。
あの人にも、祝って欲しかった。
お互いに、もう過去には縛られていないと思いたかったから。
なのに、ここまできて、今更気持ちを探るような行動に腹が立って。
「…別に。」
分かりやすいと知っている笑顔に嘘を乗せた。
「…疑って、悪かった。」
それだけで、私が何を思っているのか分かって、抱き締めてくれる。
ちゃんと、理解して謝られたら、それ以上は怒れなかった。