第38章 キスという手段
扉が閉まる音がする。
これで、やっと2人きりになれたけど。
「りら、何のつもり?」
まずは、蛍の怒りを静める作業をしなくてはならなかった。
「溜め息したから。」
「だからって、皆の前でする事ないんじゃない?」
「反射的にやったから。」
「君は動物か何かなの?脊髄反射系の単純さ、どうにかしたら?」
「人間も動物。」
「君ね…。」
少しの間は言い合いになったけど、最終的には蛍が呆れる形で終息。
そして、沈黙。
言いたい事はあるけど、何をどう言えば良いのか考えてなくて。
「君も、もういいよ。帰ったら?」
黙っていたら、用済み扱いされた。
言葉で言い返したら、また喧嘩になる。
その上、絶対に負ける。
何も言えないのが悔しくて、涙が浮かんできた。
「…まったく、もう。」
苛々したような声がして、頭に向かって手が近付いてきたから、怖くなって体が固まる。
だけど、叩かれるとか、そんな衝撃は無く、後ろ頭を掴まれて、引き寄せられた。
目の前に、蛍の顔。
唇に柔らかい感触が当たって離れる。
「これで満足?」
驚きで、流れる前に涙が引いて。
コクコクと、何回も頷いて返すしか出来なくなっていた。