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第38章 キスという手段


ちゃんと返事をしよう。
そう思いながら戻ってきたは良いものの…。

蛍とは、会話なし。

と、いうか、食事中はずっと木兎さんがマシンガントークを放っていたから話すどころじゃない。

このまま、今日を終えてアレを置いて帰るのは嫌だ。

何とか気付いてくれそうな黒尾さんに目配せする。
目が合うと、理解してくれたのか頷いて。

「さ、て。家具とかの重いモンは片付いたし?後は月島とりらだけで出来んだろ。」

帰る宣言をしながら、黒尾さんが立ち上がる。

「そうですね。細かいものは、りらにやって貰った方が早いでしょうし。
力仕事が無かったら、木兎さんも役に立ちませんから。」

赤葦さんも分かったようで立ち上がり、わざと木兎さんを攻撃した。
しょぼくれて、項垂れる木兎さんを引き摺るようにして皆は帰ろうとしている。

「…蛍、お礼。」
「なんで君、母親みたいな事言うの?」
「促さないと言わないから。」

玄関まで見送った時、無言でいるのに呆れて声を掛けた。
すると、口からはまた溜め息が出てきて。
それに反応するように、唇を奪う。

「…あーっ!」
「ちょっと、りら。それは流石に俺達が出てからやって。」
「イチャつくのも、程々にしろ。」

周りの反応は、こんな感じだった。
蛍の方は、知り合いの目の前だったというのもあって、眉間に深い皺を刻んでいる。

「すみません。皆さん、今日は有難うございました。」

相当お怒りで皆に対して何か言う状況でもないのは分かるから、代わりにお礼を言って3人を帰した。
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