第38章 キスという手段
きとりちゃんは、電話に出なかった。
それで、安堵するのは覚悟がないから。
蛍と一緒に生きたいから、家を出たい。
それを、言いたくないんだ。
きとりちゃんを、独りにしたくない。
私が本当に独りだった時、自分が皆と離れてまで救ってくれた人だから。
でも、蛍はそれを分かってくれないようだ。
気分が落ち込んで、会話をする気力もなくなる。
取り敢えずは、ここに居る本来の目的を果たそうと片付けを再開した。
やる事をやっている内に時間は昼を過ぎ、一旦休憩という事でコンビニに買い出しなんだけど。
こんな時に、進んで動くのは黒尾さんと赤葦さん、後は私だ。
2人と歩く中で、さっきの蛍との会話を聞かれていた事が発覚する。
「りらにとって、きとりさんが特別なのは知ってるから、俺なら待つよ。」
「赤葦さんじゃ、駄目です。私は、蛍の隣が良い。」
「気持ちは決まってんのに、まだセンパイに遠慮すんのかよ?」
「私にとって、皆さんと暮らしたあの家は救いで。きっかけのきとりちゃんを救いたい。淋しい家に帰らせたくない。
間違ってますか。」
「何も、間違ってねぇよ。」
「そうだね。寧ろ、駄々をこねてる月島が子どもなだけ。」
2人は私を肯定してくれる。
少しの時間だけど蛍と離れて、気持ちは落ち着きを取り戻した。