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第38章 キスという手段


‐月島side‐

りらは、コレに気付いてない訳じゃなかった。
中身が何かも聞かずに拒否をするのは、意味は伝わってるからだ。
僕と一緒に暮らす事を考えきれないんだね。

ココが引き際かな。
これ以上、粘ったら辛くなるのは僕自身だ。

持っていた物をりらの前から引き上げて、ごみ袋の方に放った。

途端にりらが慌てて、ソレを拾いに行く。

君の答えがそうさせたって、言ってやりたかったけど、また泣かれたら厄介だから、言葉ではなく溜め息だけ吐いた。

「…また溜め息吐いてる。」
「誰の所為だと思ってるの?それに、幸せなら、とっくに逃げてるカラ。」

君が、僕の幸せで。
僕から逃げていく癖に。

続けたかった言葉は、口から出ない。
りらに、唇を塞がれていたから。
それも、唇で。

「蛍が、私の涙を止める手段としてキスするなら。私は、蛍の溜め息を飲み込む為にキスをする。
蛍には、幸せで居て欲しい。」
「君、鈍いのもいい加減にしてくれる?僕から逃げてる幸せは、りらデショ?」
「逃げてない。」

淡々と僕の事を想っていると口にされても、信じる事が出来ないよ。
つい溢れた本心の言葉に返ったのは、はっきりとした強い声と、求め続けてきた僕だけを見詰める瞳。

「逃げたい訳じゃ、ない。でも、私は…あの家に居たい。」

りらは、まるで大切なものを抱えるように紙袋を抱き締めて、僕と一緒には暮らせない理由を明かした。

それに納得するどころか、他の人と比べられて、選んで貰えない事に腹が立つ。

「りら、きとりさんに連絡して。」
「何で。」
「逃げてないなら、立ち向かってくれても良いんじゃない?その約束と僕、どっちが大事なのさ?」

こんな挑発をする自分が、我儘言ってる子どもみたいで嫌だったけど。
りらは言い返さずに、従うようにスマホを操作していた。
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