第38章 キスという手段
‐月島side‐
帰ってきた時、アレを置いていた棚は片付いていて。
流石のりらでも、気付いて受け取ってくれたのかと思ったけど。
詰め終わった段ボールの箱に、ソレが入ってた。
幾らなんでも、鈍すぎデショ。
溜め息しか出ないよ。
「溜め息吐くと幸せが逃げる。」
「…りら、年齢詐称してない?」
「してない。」
僕の中で、逃げてる幸せである本人に古い事を言われて。
嫌味を返したけど、それすら通じず。
また、溜め息が漏れた。
「…言いたい事は、言わないと駄目。皆が、私に教えてくれた事。」
淡々としたりらの声。
これは、もしかして。
りらは、アレに気付いたけど僕に言わせたいから受け取らなかったって事?
「仕事で、嫌な事あったなら、聞く。」
だけど、違う意味だったみたいで。
「僕が君に意見とか求めると思ってるの?言うだけ言って満足するのって、女の考え方じゃない?
そんなの要らないよ。君は、女だから聞けば良いって思ったんだろうケド。」
苛々した状態で、返したのはりらにとって最悪の言葉。
瞬間的にりらの眼が色を失ったような気がした。
「ご飯、別に要らない。帰りたい。」
引いていた手が離れる。
振り払われた訳じゃないけど、掴み直す事は出来なかった。