第37章 約束
気が変わったら、その時はその時、なんて言い返したけど。
私への異常なまでの関心が、たった半年くらいで無くなるなんて有り得ないときとりちゃんだって気付いている筈だ。
それなのに、何で。
「やっぱり怒られた?」
考え込んでいると、確信している顔で声を掛けてくる。
そういえば、きとりちゃんと話をする前から怒られるのが分かっていた風だった。
何故なんだろうか。
「りらがきとりさんを大切にするように、きとりさんもりらが大切なんだよ。」
「大切なら、なんで怒るの。」
「大切だから怒るんだ。結婚って、人生に大きく関わる事だから。りらに、ちゃんと考えて欲しいんだよ。」
「ちゃんと考えて、帰ってくる時期が分かったんだから、それまで待って欲しいのは悪い事なの。」
「俺は悪いと思わないけど。きとりさんからしたら、親でもない自分に結婚のタイミング委ねんな、って所。」
今度は隠す事無く、私の疑問を解決してくれたけど。
「その上で、聞くけど。りらは、きとりさんとの約束を果たした後、俺との約束を守ってくれる?」
答えの出ない質問が飛んできた。
さっきまでは、いつまでか分からなかったし、その約束があれば京治はずっと私を見てくれると思っていた。
今は、違う。
きとりちゃんの帰る時期が決まって、京治との約束にも期限が付いた。
おかえりなさい。
その言葉は言えても、すぐにきとりちゃんを独りにするなんて、私に出来るんだろうか。
約束というものは、残酷な選択を迫ってくるものだと初めて知った。
答えが出ないまま京治の家に泊まる訳にはいかず。
「ごめん。ちゃんと、考えたい。守れない約束したつもり、無いけど。ごめん。」
何度も謝って家に帰った。