第37章 約束
‐赤葦side‐
りらは、あの家の持ち主の帰りを待ち続けている。
その人が誰よりも孤独に弱い人だと知っているからこそ、りらを否定は出来なかった。
でも、その彼女はりらを何より大切にしていて、幸せを願っている事も知っている。
もし、自分の為に俺との生活を諦めたと知ったら、怒り狂うんじゃないだろうか。
「きとりさんが、それを今でも望んでると思ってる?りらの状況も、変わっているのに?」
責める訳じゃなく、諭すように声を落とした。
「約束は守る。おかえり、がある家に帰ってきて欲しい。」
きとりさんの望みじゃなく、りらの意思。
りらは、真っ直ぐな眼をしていて譲らない強さを示している。
頑固なりらが簡単に曲がってくれる訳はないと分かった。
「それなら、りら。俺とも約束してくれる?」
「内容による。」
「きとりさんが戻ってからで良い。俺と結婚して下さい。」
「…はい。勿論。」
りらにとっては、この上無い好条件だろう。
もしかしたら、きとりさんが東京に一生戻らない可能性もあるけれど。
紙上の関係に拘っている訳じゃないから、別に良い。
この約束は、りらに付ける鎖。
りらが、何があっても俺から離れる事が出来なくなるように。
結婚という形にして、籍で縛ってやろうと思っていたけど、それは拒否をされたんだから仕方がない。
その負い目もあるだろうからりらは、律儀に俺との約束を守り続けるんだ。
それこそ、一生でも、ね。
望んでいたシナリオとは違うものだったけど、りらの人生を自分のものに出来た。