第37章 約束
勝てる訳がない。
それなのに、本心としてはあんな日記で済まさずに行動で示してくれたのが嬉しくて。
受け取れと、無理強いしてきている訳じゃないのも分かっていたから了承した。
私達の関係を変える合図は、やっぱり2つのダイスが転がる音。
淡々と進んだゲームの勝敗は、あの時と同じように最後の判断を私に委ねる形になった。
本当は、今の京治の手番で勝てていた筈なのに、そうしない。
そして、私の手番を示すように渡されたダイス。
「…ごめん。」
今回は、あの時のように自ら敗けを選ぶ事は出来ない。
コマに当てないようダイスを転がした。
その出目なんて、関係がない。
私は元々の手札だけで、勝利を飾ってゲームが終了した。
テーブルの端に置かれていた手のひらサイズの小さな四角は、京治の手の内に戻る。
「理由を聞いてもいい?」
悲観した様子はない。
だけど、視線は手の中の四角を見詰めて、私を決して見ようとしない。
私は、私だけをずっと想ってくれた人を傷付けた。
これから話す事も、京治じゃなくて他の人を選んでいる現実だ。
もっと傷付ける事になる。
それでも、あの家の絆を知っている京治だから納得してくれると信じたい。
だから、私と彼女の約束について話をした。