第37章 約束
あれからも、京治は日記をつけている。
それをアパートに行く度に見るのはもう癖になっていた。
たまに、何が食いたい、だとか完全に私宛のメッセージが書いてあると、それを作ったりしているし、向こうも気付いているのは分かっている。
その食事のリクエストなんかは問題ないのだけど。
父と元々知り合いである京治は、私の実家に顔を出している事がある。
私が実家に近寄りたがらないのを知ってか、黙って行っているようで。
それを、この日記で知る事になるのだ。
別に、友人として一緒にテーブルゲームをやっているだけなら、勝手に行くのは良しとしよう。
問題は、私達が交際している事は親も知っていて。
京治は、父にとってお気に入りなものだから、結婚を急かされている、とか。
プロポーズもまだなのに、書かれている事だ。
京治の事だから、わざと日記にこんな事を書いて、私の反応を伺っているんだろう。
でも、私には私の事情があって。
見ていないフリをし続けるしか出来ないのは、申し訳ないと思いながら日々を過ごす。
私が日記を覗き見ている事は知っているのだから、そんなものは無駄で。
ついに、答えを求められる日が来てしまった。
「りら、今日のゲームは久々に賭けをしようか。」
お付き合いをするきっかけになったゲームを取り出して、京治が笑っている。
「俺が勝ったら、これを受け取って貰えますか?」
それでも、私には甘い京治が強要する事は無く。
目の前に四角い箱を差し出された。