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第36章 特別な存在


他の女が当たり前のように組み込まれたプロポーズだけど、私には最高の言い回しで。
グラスの側へと手を差し出す。

「貴方の家族にして下さい。」

言葉でも返事を伝えると、手のひらに指輪が落ちてきた。
大切なものを扱うように、ゆっくりと指先を閉じて手の中に包み込む。

「有難う御座います。」
「りらはやっぱ、そっちの笑顔のが良いな。」

自然と顔に浮かんでいた笑み。
作り笑いじゃないのは、すぐに分かってくれて、黒尾さんも笑顔を返してくれた。

「…じゃ、俺のカワイイ未来の奥サマに問題デス。」

その笑顔のまま、突然のクイズが始まる。
また意味が分からなくなって、眉を寄せた。

「問1、俺の下の名前は?」
「鉄朗。」
「ハイ、正解。
問2、りらも黒尾サンになるか、俺が熊野サンになるか、どっちがいい?」
「大体は、男性側の姓を名乗るようになるのでは?」
「…だな。どっちにせよ、同じ姓を使う事になると思うんだが?」

ここまできて、やっと質問の真意に気付く。
回りくどいやり方だけど、理由も分からず名前呼びを求められたら、私は意地になって呼ばないだろう。
だから、こういう言い方をしたんだ。

「あの、鉄朗…さんと、お呼びしても?」
「どうぞ。」
「鉄朗さん、これからも何卒宜しくお願い致します。」
「こちらこそ。」

望み通りの言葉を贈ると、指輪を包んだ手を握られる。
指を解すように開かされて、鉄朗さんの指先に摘まれた指輪が左手の薬指に移された。

指輪のサイズなんか計った事も無いから、本人も知らなかったのに、ピッタリで。
こんな部分まで、私の事をよく解ってくれている。

昔から、それこそ出会って間もない頃から、私の一番の理解者だったこの人は…。
たった1人の、特別な存在になった。







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