第36章 特別な存在
‐黒尾side‐
『アンタ、そういうクサい事、やりたい人でしょ?ま、あのりら相手だから意味が伝わると思わないけど、頑張りなさいね。』
昨日、センパイから掛かってきた電話の最後に言われた言葉。
あの人は、俺の事を本当によく分かってる。
だから、こんなものまで手配してた。
そして、りらの事もよく分かってやがる。
俺も予想をしては居たが、まさか本当に煩悩と返してくるとは。
しかも、最終的にはネット頼りで調べようとか。
それで理解されても、こっちは面白くねぇ訳で。
「…りら。」
スマホを触る手を止めるように握る。
画面を眺めていた眼が俺を見て、視線が絡んだ。
「俺と、結婚して下さい。」
いつもは、ふざけた顔をしていても。
これだけは真剣に言ってやらなきゃならない、108本の薔薇の意味。
りらは、驚いたように瞬きをして。
「黒尾さん。」
普段通りの抑揚のない声で俺を呼ぶ。
その表情は、綺麗な笑顔だった。
「今日の事、きとりちゃんに仕組まれたんじゃ、無かったんですか。」
そう、コイツの中で一番分かりやすい表情。
不機嫌な作り笑い。
完全に怒っているのが見て取れた。