第36章 特別な存在
1人になって、改めて考える。
今日の事は、きとりちゃんが勝手に仕組んだのなら、黒尾さんだってある意味被害者で。
それなら、不機嫌になって楽しくない食事をした事については謝らないとならないな。
謝り方を考えている内に、黒尾さんが戻ってきた。
その両腕に、有り得ないものを抱えて。
「りら。」
座っている私の横に膝を付く黒尾さん。
差し出されたのは、数えきれないくらいの赤い薔薇の花束。
「お前の為に、108本の薔薇を摘んできたぜ?」
愛を伝える花言葉のある赤い薔薇。
本数で意味が変わると聞いた事はある。
108、なんて中途半端な数に意味があるんだろうか。
唇の端を上げて、企むような顔をしている黒尾さんを見ていると、無意味な数では無さそうだ。
でも、108で思い浮かぶものなんて。
「煩悩の数ですね。」
これぐらいで。
一瞬で、呆れたような顔をされたから違う意味があるのだろうと分かる。
でも、普通からは外れた思考能力の私には考えるだけ無駄な事だ。
分からない事は、いつも黒尾さんが教えてくれた。
だから、今もきっと教えてくれる。
口を閉じて、疑問を表すように首を傾げて見せた。
だけど、答えは貰えなくて。
唇を笑ませて、ただ見つめ返される。
意味が分からないから、受け取る事も出来なくなって、調べてしまおうとスマホを取り出した。