第34章 episode0<epilogue>
ダーズンローズの1本1本には、それぞれ意味がある。
愛情だとか、幸福だとか、信頼だとか。
他の国では、ダーズンローズを愛する人に贈ると幸せになれる、と言われているくらいのものだ。
そして、ダーズンローズは1本1本の意味とは別にこんな意味も持っている。
私のものになって。
ブライダル関係の私が知らない訳がない。
よく演出にも使われているものだ。
それを分かって、私に贈る意味を探ろうと少し上にある顔を見詰めた。
「センパイに、おかえり、を言う役目。俺にやらせてくんね?」
その言葉で思い出した。
私が、この家から離れる前日にクロと2人きりになった時に話した事を。
その時、クロはこう言ったんだ。
‘30になった時、お互い独り身だったらって約束、生かしておかね?条件付きで。’
その条件は…。
たまたま独り身で、相手がいないからって約束にノって結婚するのはナシ。
つまり、お互いがお互いを必要としている事が条件。
私は、結局あっちでも彼氏なんか出来ず。
何かあれば、一番最初に連絡するのは絶対にクロで。
他の皆とも、りらとも違った意味で特別な存在はクロだという事は変わっていない。
でも、クロは?
りらを説得する為に、自分の気持ちを犠牲にしようとしてない?
クロもりらの事が好きだったんじゃないの?
そんな疑問がわいてきて、花束を受け取る事が出来なかった。