第34章 episode0<epilogue>
その日が、やってくる。
朝から飛行機、電車の旅で家に着くまでに疲れてしまった。
りらからも、買い物に行っている、と先程連絡があったから家にはまだ誰もいない筈だ。
皆が来るまで少しでも休もうと思っていた。
…けど、それは出来なかった。
誰もいない筈の家。
何故かリビングの電気が点いている。
りらの消し忘れも考えたけど、そのテのミスは多分しない。
誰か早めに来たのだろうかと、リビングに入る。
「…よ。」
テーブル脇の椅子に、1人。
クロが、軽い感じで片手を上げて挨拶してきた。
「久し振り。クロ、早いね。」
「…まぁ、用事があったからな。」
言葉を交わしながらも、私から視線を外して隣の席に目を向けている。
その椅子の上に乗せていたであろう物を持って、私に近寄ってきた。
「俺の用事、な。センパイ、受け取ってくれるか?」
目の前まで来て、差し出されたのは花束。
赤い薔薇。
つい、数を数える。
私みたいな仕事をしていると、薔薇は本数で意味が変わると分かっているから。
12本。
「…ダーズンローズ。」
12本の薔薇は、こう言われる。
それを口から出した時、クロが笑った。