第33章 episode0
一通り、赤葦とふざけた後にクロがこちらを向く。
「…ま、本当に困ったら向こうから連絡あんじゃね?」
上手く話を逸らせなかったらしい。
深くは聞かないけど、無かった事にも忘れた事にもしてくれないようだ。
「…だと良いけど。」
人に頼る事がとにかく苦手で、意地でも1人で立ち続けようとするりらが自分から連絡してくるなんて想像も出来なかった。
「いっそ、毎日でも連絡してみたらどうです?まぐれ当たりでも繋がる日があるかも知れませんよ。」
「…繋がったとしても、その後は?根掘り葉掘り聞いて、オシマイ?実家にすら戻らないあのコが、ココに理由もなく来るとは思えないし。」
「…来る理由、必要か?俺と木兎は大学近いからって明確な理由があるが…。赤葦なんか、木兎の世話の為に住んでんだぜ?」
話していて、1つの案が思い浮かんだ。
私は、もう一人でも平気。
だって、私の悩みにこんなに付き合ってくれる皆がいる。
それは、離れて暮らしてもきっと変わらないと信じている。
だから、理由を作ろう。
私は、異動を受けて離島に行く。
私の代わりに、彼女がこの家に住む。
皆なら、なんとかしてくれるような気がした。
一緒に住んでくれるだけじゃなくて、1人で生きようとする彼女の考え方を変えてくれるような。
あのコもきっと、家族を求めてる。
血の繋がりじゃない、本当に信頼出来る人という意味で。
その相手に、皆がなってくれる事に賭けてみようと思った。