第33章 episode0
それ以来、大した事件もなく季節は流れて。
クリスマスが近付いた頃に職場で、ある打診をされた。
リゾ婚、と言われる、リゾート地で挙式を挙げるカップル向けに新規オープンする離島の支店に行ってくれないか、と。
独り身の私は、異動をさせるには都合が良い人材なんだろう。
単身か、家族同伴か、それすら選ばなくてもいいのだから。
ただ、その離島は台風が多く襲来する場所だったし、皆と離れたくない私は、考えておきます、と先伸ばしにした。
皆に相談したら、多分心配されて断るように迫られる。
だから相談なんか出来なくて、悶々と過ごしている内に年が明けた。
答えを出さなきゃならない期限は近付いて。
焦っていた私は、ただ1人だけ切れずに繋がっていた親戚に連絡をした。
切れずになんて言っても、たまにメールでやり取りするくらいで関わりは薄いから、新年の挨拶だけど。
生真面目な所がある彼女なら、何らかの返信があるだろうから、そこから相談に持ち込もうと思っていた。
それが、待てど暮らせど返事はこない。
しびれを切らして、電話しても電源が入っていないようだ。
彼女の職場に電話をしてみると、辞めた、の一言で片付けられて。
嫌だったけど彼女の実家に連絡したら今度は、まだ仕事続けているから帰っていない、とか。
娘の状況くらい確認しろよ、と苛々して電話を切った。