第33章 episode0
夕方、あの事故現場に行くまでの私の精神状態だったら、一番必要だった人。
でも、今の私は両親がいない事を完全に受け入れてられている。
新しい‘家族’が、私を救ってくれた。
それは、クロだけじゃない。
この家に住む、皆だ。
そんなに話した事もない私を、雨の中追い掛けてくれたツッキー。
私の異変を聞いて、先約より私を優先してくれた木兎と赤葦。
クロは確かに特別。
これは、変わらない。
きっと、変えられない。
だけど、他の皆も違う意味で特別。
だから、クロだけに執着するのは終わり。
それを告げる為に、口を開いた。
「クロ、おかえり。私はもう寝るから、また明日ね。おやすみなさい。」
今日は皆に大切にされている事を実感して、満たされている。
一緒にいてくれる為に、少しでも早く帰ってきてくれたのだろうけど、もう大丈夫。
すぐに部屋に戻ろうとした事で、クロにばかり拘るのを止めた事が分かったんだろう。
「お休み、センパイ。」
後ろから聞こえた挨拶は、安心したような優しい声だった。