第33章 episode0
‐赤葦side‐
つい先日。
黒尾さんから、掛かってきた電話。
内容は、木兎さんの事で。
出来るなら、俺にも同居して木兎さんの世話をして欲しいと言う。
それはそれは、俺にとって都合が良いばかりの話。
でも、すぐに良い返事を出したら、勘の良い彼には何か企みがあると気付かれてしまいそうだから、あえて渋り。
考える時間と称して、少しの日を空けた。
まぁ、出迎えが木兎さんで、いきなり説教をしている場面を見られる失態は犯したけど。
それは、すぐに取り返せる。
これまた都合良く、しょぼくれている木兎さんを使って。
この人は、この状態の時の扱いに慣れていないようだから。
木兎さんの機嫌取りが出来るだけで、俺がこの場にいる価値があるでしょう?
わざとらしく吐いた溜め息。
それに気付いて振り返った彼女に、少し退いて貰えるように手で示す。
空けられたスペース、木兎さんの目の前にしゃがんだ。
「木兎さん。厳しい事を言いましたけど、貴方なら出来ると思っての事です。」
「…俺、何も出来ねーよ。」
あぁ、面倒臭い。
一回しょぼくれると、これだから。
かと言って、構って欲しくなるまで放っておく事も今は出来ない。
「出来ますよ。ほら、木兎さんしか出来ない事もあるでしょう?」
「出来ねーって言ってんだろ。」
「…例えば、俺や黒尾さんはまだ未成年です。酒も煙草も無理ですね。」
「黒尾なんか、後1ヶ月もしねーで二十歳じゃんか。そーしたら、俺…。」
「でも、‘今’は未成年です。」
諭すように声を掛け続けた。
ここで、彼女がフォローでもしてくれたら、楽に復活してくれる。
気付いてくれる事を願って振り返ると、目が合った彼女は分かってくれたようで。
「そうだよ、木兎。今現在は、私が酒に付き合ってーって言える相手って、木兎しかいないんだよ?」
有難い言葉が振ってきた。