第33章 episode0
家族ごっこ、をするのだと決めている。
お互いに、未練があるのだと分かっていても、だ。
それが、今の私達の付き合い方。
だから、同居人として以上の束縛は出来ない。
「センパイ、今日は遅くなるから、飯は一人で食ってくんね?」
「了解。バイト?」
「おぅ。今日、人足んねーんだよ。」
クロは、バーでバイトしている。
週末なんかは、忙しくて帰ってこれなくなる時もある。
まぁ、私も仕事柄、週末は忙しいんだけど。
クロみたいに深夜勤務はないから、独りで食事になってしまう。
私はこの家の中に1人でいる時間が苦手で。
そういう日は、夜中までふらふらと繁華街を出歩いていた。
今も、そのつもりで1人で外を歩いている。
「お姉さん、一人?オレと飲まない?」
酔っ払うと、女だというだけで声を掛けてくるヤツはいるみたいだ。
こんなの、夜中まで出歩くようになってから何回もあったから、断るのも慣れた。
「悪いけど、私は自分より背の高い男が好みなの。」
身長が男性並み…というか、男だったにしてもデカイ部類だろう私はある意味でナンパを撃退する武器を持っている。
だけど、この時の男は頭がザンネンなヤツだったみたいで。
「オレ、背が高くてスレンダーな女が好みなの。」
私の言い方を真似て、言い返してきた。
そのやり方、逆に腹立たしくなるって分からないかな、コイツ。
「な、お姉さん、オレの好みなんだよ。ちょっと胸は足りないからドストライクではないけどー。」
一言余計だ。
顔面ボールにしてスパイク決めてやろうか、マジで。
イライラして手を出そうとした時、突然後ろから抱き締められて。
「俺の彼女に話し掛けんな、チビ!」
聞き覚えがある声で、ナンパ男が追い払われた。