第33章 episode0
‐木兎side‐
俺、全部聞いてた。
あんな、死にそうな顔して歩いてた理由も、ただ淋しかっただけじゃねぇって、バカでも分かる。
黒尾の事、忘れたくて。
思い出を金にするなんて汚い言葉使って。
嫌われよーとしてんの。
でもな、俺はそのやり方って違ぇと思う。
好きなもんは好き。
それの、何が悪いんだよ。
黒尾忘れる為に、家まで売ろうとか、オカシイだろ。
さっき、黒尾がココから出た時に見付けた紙。
ムズカシイ字ばっかで、読めねぇけど。
多分コレが、この家を売る…ケーヤクショ?だろ。
「ほれ、やる。」
黒尾に紙を渡す。
驚いたみてぇに、目をデカく開いてた。
「俺、お前等のカンケーとか、マジ分かんねーけど。傍にいんのって、カレカノだけか?
付き合ってねぇと、一緒に住んじゃいけねーの?」
普通に思ってた事を口から出す。
黒尾は、なんか考えるように間を空けて。
「…お前に、教えられる事があるとは、な。」
吹っ切れたみてぇに笑った。
「シツレーな!俺だってバカじゃねーぞ!黒尾より、少しだけ年上だしな!これからも、なんでも教えてやるからな!」
「馬鹿だろ。お前、喋ってる言葉すら漢字変換されてる気がしねぇぞ。」
人の事をバカにしたまま、紙を折り畳んでポケットにしまった。
「木兎、サンキュ。」
小さく礼を言った黒尾は、何かを決めた時の顔をしていた。