第33章 episode0
わざと遠回りするように、道順を変えて歩く。
結果は変わらないのに足掻きたい。
「センパイ、さ。俺と居るの、キツくね?」
いつまでも家に帰らないからか、歩きながら始められた会話。
否定も肯定も出来ずに黙っていた。
「…俺は正直、今の状態はしんどい。2年早く生まれてりゃ、なんて思っても無理なモンは無理だしな。」
年下のクロが良い、そう言ったのは私だったのに。
不安を誤魔化す為に言い続けたその言葉は、思っていたより彼を傷付けていた。
「…ごめん。」
多分、もう言わない、と約束しても、すぐに破ってしまう。
クロが余裕を見せてくる度に、年上のプライドなのか優位に立ちたくて口に出していたんだから。
謝る事でしか、答える事が出来ない。
私みたいに可愛いげがない年上女より、可愛らしい大学の友人とか、バイト先の人とか、他にいってしまうんじゃないかと不安だったのだ、と。
泣いて縋ってしまえば、きっとこの場を収める事は出来る。
でも、そんな事すら出来なかった。
クロを自由にしてあげないといけない。
私に振り回されるのは、終わりにしてあげないと。
「別れようか、私達。」
最後の最後まで、プライドが邪魔をして涙すら出ない。
年上らしく余裕ぶってしまう自分が最高に可愛くない女なんだと自覚した。
「…ん。」
たった一つだけの音で返事が返って、私達の関係は終わった。