第33章 episode0
クロと、所謂恋人になって少しの間は幸せだった。
でも、恋愛なんてした事もない私には不安も多くて、すぐに喧嘩を吹っ掛けてた。
年齢だとか、クロが学生である事とか、言われたくないだろう事も沢山言っていた。
それでも受け入れてくれるクロの余裕に腹が立って手を出した事もあった。
なんで、アンタは平然としていられるの。
なんで、笑って私を許せるの。
そんな事ばかり考えて、クロが追い詰められていたのに気付きもしなかった。
「…センパイ、ちょっと話あんだけど。」
久々に名前じゃなくてそう呼ばれた時、終わりが近付いている事を感じた。
別れの言葉を聞きたくなくて、逃げ回って。
数日間は避けたけど、もう限界。
クロは私の職場にまでやって来て、仕事が終わるのを待っていた。
「…家で待ってればいいのに。」
「待ってても逃げんだろ。」
完全に見透かされていて、家に帰り着くのが怖くなった。
話をしたら終わりなのだと、分かっているから少しでも長い間、外に居たかった。