第33章 episode0
‐黒尾side‐
淋しい思いさせたくない。
独りになんか、してやらない。
人間ってのは、群れて生きる動物なんだよ。
誰かと一緒にいなきゃ、生きてけねぇんだ。
だから、センパイが本当に傍に居たい相手を見付けるまでは、俺が傍にいてやるよ。
それは、過ぎた庇護欲だと思っていた。
センパイに、避けられるようになるまでは。
俺から離れようとしてく理由は…多分、俺にオチたから。
女友達の話すると、機嫌悪くなるし。
傍に居たい相手を見付けるまで…なんて、思ってたが。
その相手として自分が見られるのは想定外だった。
センパイの気持ちに気付くと、生まれた感情の変化。
好かれたから気持ちが向くとか中学生かよ、俺は。
でもな、傍にいてやる、なんて恩着せがましく思うより。
傍にいたい、って前向きな気持ちのが、センパイだって良いだろ?
関係を、同居人から変える為に仕掛けた話。
彼女の口から告白されたのに、言葉で返事が出来なかった。
いっつもヘラヘラとして、ふざけている俺が何を言っても薄っぺらく感じるだろうから。
代わりに、行動で示した。
「クロ、今の、ファーストキス…なんだけど。」
「…え?」
唇が離れた途端に言われた言葉が可愛らしい。
でも、口から漏れたのは疑問を表す一音。
この人、そんなモテなかったか。
男女問わず、友達は多いだろ。
気の合うヤツとノリで、とか出来るタイプだと思ってた。
「冷静に考えてよ。こんな男みたいな180も身長があるデカ女、相手にする奇特なヤツいないでしょ。」
あぁ、成程。
身長コンプレックスあんのか。
そういうトコも、可愛い。
それを、素直に口にしたってコンプレックスある人間は信じねぇんだろうな。
「まぁ、俺のがまだデカいし。気にすんなよ、センパイ。」
だから、コンプレックスを払ってやれるような言葉を送る。
予想に反して微妙そうな顔をしている。
「…センパイ、は嫌なんだけど。」
何、この可愛い生物。
自分の彼女になった途端に乙女なきとりサンに、こっちも完全にオチた。