第33章 episode0
そんな私の変化に彼は敏感に気付いた。
「センパイ、俺が帰ってくると最近すぐ部屋戻んだろ。何かしたか、俺。」
始めの問いは何かを探るように。
「分かってんだよ。センパイ、俺が学校の話すると機嫌悪いの。妬いてんの?学校のトモダチに。」
二つ目の問いは殆ど直球。
「妬いてるとか、自意識過剰だね。私が学生の、年下男にそんな余裕ない事する訳ないじゃない。」
気持ちを確定させてしまえば、戻れなくなる。
それを分かって、口から出たのは越えられない壁を盾にした言葉。
「…じゃあ、俺が大人になってちゃんと就職でもしたら、相手してくれんのかよ?歳の差は変わらなくても、いつまでも学生じゃねぇぞ。」
壁が越えられないなら壊せば良い、その言葉はそう言っているような気がして。
一瞬で盾は突き破られた。
「…私、背も高くて可愛くないし、気も強くて年上面してアンタをちょっとバカにしてるトコ、あると思う。」
「知ってる。」
敗けを認めて話を始めると彼はいつもみたいに意地悪く笑った。
「…でも、私はアンタがどうしようもなく好きみたい。学生で、年下のクロで…いや、クロ‘が’いいの。
私とお付き合いして貰えませんか?」
人生で初めてした告白は恥ずかしいもので俯いた。
それを許さないとばかりに、後ろ頭を掴まれて上を向かされる。
少しだけ上から降ってきたキスが彼の答えだった。